住宅ローン返済中ですが、離婚後、慰謝料・養育費代わりに私(妻)は子供と一緒に家に住み続けることはできますか?

「夫が慰謝料や養育費を支払う代わりに住宅ローンを負担し、妻子がそのままマイホームに住み続ける」という約束のみでは危険です。経済的な理由で元夫の方が住宅ローンを支払えなくなること。マイホームを売却されて突然住めなくなってしまうことなど、多くの懸念があります。決してバランスの取れた取り決めではありませんので、将来起こりうるリスクをシッカリ認識し、できるだけの準備をされることをオススメします。

離婚をする際に、「夫が慰謝料や養育費を支払う代わりに住宅ローンを負担し、妻子がそのままマイホームに住み続ける」という取り決めがされることがあります。

元夫が住宅ローンを支払っている限り、妻子は家に住み続けることはできます。しかし、何らかの理由で住宅ローンを返済されなくなってしまうとマイホームは競売になり、そして元妻と子どもは家を出て行かなければなりません。また、所有権を持つ元夫がマイホームを売却することも考えられます。ですので、取り決めだけで済ませることは元妻と子どもにとって不安が残るもので、バランスが取れた条件ではないのです。

夫からすれば、「そんなことにはならない!!」と気分悪く思われるかもしれませんが、離婚をする以上、二人の関係は以前とは異なります。慰謝料、養育費代わりというのことであれば、もっとバランスの取れた取り決めが必要ではないでしょうか。

離婚の際、住宅ローンの返済と慰謝料・養育費のバランスある取り決めとは?

① 家賃の支払いがなくとも契約書を交わすこと

家賃の支払いがなくとも契約書(期限付き使用貸借契約)を交わしておきましょう。元妻と子どもに建物の使用権限があることを書面にしておくことで、トラブルを防げます。トラブルとは具体的には、「あとでやっぱり家賃を払って欲しい」と言いだされたり、マイホームを第三者に売却されてしまうことなどです。その契約書があれば、明確に使用権限があることを示せます。

使用貸借契約とは

不動産を有償で貸し付ける契約を賃貸借契約と言うのに対して、無償で貸し付ける契約を使用貸借契約と言います。

② マイホームを第三者に譲渡しないこと

マイホームの名義(所有権)が夫である以上、夫の意思で自由に家を譲渡(売却)できます。そうされないように、「妻と子が住んでいる間は、家を第三者に譲渡しない」といった取り決めをしておきましょう。

③ 住宅ローン返済状況を情報共用すること

元夫に住宅ローンやその他の借金に滞納が生じても、銀行や債権者はローン契約者ではない元妻へそれを伝えることはありません。そのため、知らされたときは既に競売まで進んでしまっていることがあります。

そうならないように、住宅ローンはもちろんのこと、その他の借金についても、滞納があれば元夫は元妻へ伝えなければならないことを文書にしておきましょう。

④ 固定資産税の納付状況を情報共用すること

固定資産税の滞納があると、役所はすぐにその不動産を差押えます。そうならないように、固定資産税の納付状況についても情報共有することにしておきましょう。

⑤ 住宅ローンを妻が支払った場合どうするか

元夫が住宅ローンを支払わなくなったとき、元妻が代わりに支払う場合も想定されます。このとき、支払った分を後で返してもらえるように、それも書面で約束しておいた方が良いでしょう。また、できることなら前夫以外の誰か、その親や兄弟に保証人になってもらえればより保全できます。

⑥ 慰謝料、養育費の取り決めをすること

住宅ローンの支払いがなされなくなり、元妻と子どもがマイホームを出て行かなければならなくなった場合、本来支払われるべき慰謝料や養育費を取り損ねてしまうかもしれません。

そうならないよう、その後の支払いについてはどうするか?まで、書面でシッカリ取り決めておきましょう。

元妻と子どもが住み続けるには、「任意売却」という方法もある

元夫が住宅ローンを返済しながら、元妻と子どもが住み続けることには一定のリスクがあることを認識いただけたと思います。

ところで、「元妻と子どもがそのまま住み続ける」ことを実現する方法として、「任意売却」をご存知でしょうか? 任意売却とは、マイホームを投資家に購入してもらい、家賃を支払って住み続けるというものです。こうすることで、元夫の住宅ローン滞納による競売リスクをなくすことができ、家賃を支払う限りは元妻と子どもは家を出て行かなければならなくなるようなことはありません。

元夫は家の名義(所有権)を失ってしまいますが、売却によって住宅ローンの残債務は大幅に減ります。状況によっては債務がなくなる場合もあるでしょう。仮に、住宅ローンが残ったとしても、経済状態に合わせて毎月の返済額を決められます。家賃の額によっては、任意売却が得策ではない場合もありますが、検討する価値があるものとして考えてみてください。

【参考事例】
離婚後、音信不通の元夫が住宅ローン滞納。当社が見つけ出して同意を得た任意売却により、母子2人の住み続けに成功

任意売却からすま相談室へ相談する

この回答の著者

烏丸リアルマネジメント株式会社
代表取締役
矢田 倫基

宅地建物取引士
任意売却コンサルタント
NPO法人 住宅ローン問題支援ネット 理事

これまでに1,200件を超える住宅ローン返済・滞納問題を解決してきた、任意売却のエキスパート。数多くの住宅ローン困窮者を救ってきた面談は「心のカウンセリング」と呼ばれ、関西圏のみならず全国から相談者が後を絶たない。

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