自己破産の際、所有する不動産の売却と自己破産のどちらを先にすべきですか? どこへ相談すれば良いですか?

不動産を所有した状態で自己破産をする場合、それを売却しなければなりませんが、まず先に不動産の売却を行い、次に自己破産の申し立てをするのが鉄則です。この順序で手続きすることで、そのまま住み続けることができたり、解決時間を短縮できたり、引越・破産費用を捻出できたり…など、ご自身にとって都合良く自己破産できるからです。
不動産売却は任意売却専門会社へ相談し、自己破産は弁護士か司法書士事務所へ相談してください。

不動産を所有した状態で自己破産をする場合、誰に相談すればいいのか・・・悩んだ挙句、とりあえず、弁護士や司法書士に相談に行くという方が多くおられます。

自己破産することだけが目的であるなら、それはそれで正解です。しかし、同じ自己破産をするにしても、不動産を所有している場合、相談先や進め方によってより良い条件で解決できることをご存知でしょうか?

例えば、

  • 今の自宅に住み続けながら自己破産をする
  • 引越するにしても極力長く住み続け、自己破産する
  • 引越費用や破産費用を捻出し、自己破産をする
  • 連帯保証人や連帯債務者への影響を最小限にして、自己破産をする
  • 不動産を競売にさせないで、自己破産をする

実は、一般的な弁護士事務所や司法書士事務所へ自己破産を依頼すると、上記のようなことはあまり考慮されず、ただ事務的に自己破産手続きが進められます。

なぜなら、これらの条件は自己破産手続きの中で行う検討ではなく、あくまで不動産の売却の中で行う検討で、弁護士や司法書士にとって積極的に行う事ではないからです。
また、仮に検討してくれたとしても、不動産売却が専門でない弁護士や司法書士では期待にそえるような結果は得られないというが本当のところです。

不動産は競売で処分するのではなく、任意売却すること

自己破産手続きを進める場合、所有する財産(自由財産以外)は全てお金に変えなければなりません。不動産があればそれも処分をしなければならない訳ですが、弁護士や司法書士に自己破産を依頼すると大抵、競売で処分されることになります。

しかし、競売では上記のような希望を叶えることはできません。
そこで任意売却が出てくるのですが、任意売却は競売と違い一般市場で不動産を売却するため、上記のような条件を自由に付けることができます。

例えば、そのまま住み続けたいというのであれば、身内、知人又は投資家などに不動産を売却し、家賃を支払ってそのまま住み続けることができます。
また、引越費用が必要であれば、それを支払ってくれる買主を探せばいいのです。

競売は買主を選ぶことはできませんが、任意売却は買主を選ぶことができるのです。

また、任意売却は競売よりも高く売却することができるため、もし連帯保証人や連帯債務者がいるのなら、その方達への影響も最小限におさえることができます。

ですので、自己破産をする場合、不動産は競売で処分するのではなく、任意売却する方が得策なのです。

どこへ相談したらいいのか?

自己破産手続きと不動産売却は分かけて考える必要があります。自己破産の依頼は弁護士・司法書士事務所ですが、不動産売却に関してはやはり不動産会社に依頼する方がベストになります。

ただ、不動産会社といっても、自己破産手続きも絡んだ不動産売却になるため、一般的な不動産会社では対応は難しくなります

例えば、家の資産価値よりも住宅ローンの方が上回っている、いわゆるオーバーローン状態にある場合、債権者との交渉・調整が必要になります。
また、今の自宅に住み続けるかたちで自己破産する場合など、一般的な不動産会社では総合的な対応できません。
ですので、任意売却を専門にする不動産会社に依頼する方が良いことになります。

しかしながら、一般的な任意売却専門会社も不動産会社であることには変わり有りません。そうなると、自己破産などの法的手続きを行うことができないため、やはり、自己破産は弁護士か司法書士へ相談しなければなりません。

結局、相談先は二つになってしまいます。

そこで、当社の場合、任意売却専門会社と司法書士事務所が一体となっているため、任意売却はもちろんのこと破産手続きなどの債務整理も一括して相談・依頼が可能になります。
このような体系をとっている会社は非常に少ないですが、本当は私達のように法的手続きも直接行うことができる任意売却専門会社に相談・依頼するのが良い選択になります。

自己破産と任意売却をする場合の手順

自己破産と任意売却をする場合、まず先に任意売却で不動産を処分し、その後に自己破産手の申し立てをするのがベストな手順になります。

なぜ、自己破産手続きをする前に任意売却をするのか?

自己破産の手続きには2つの種類があります。同時廃止事件と管財事件です。財産が有る状態で破産手続きを行う場合は管財事件、財産がない状態では同時廃止事件になります。

自己破産を先にする場合、財産がある状態での自己破産手続きになる為、管財事件となります。

実は管財事件で任意売却すると、債務者や所有者にとってデメリットが生じてしまうのです。
デメリットとは、「解決に時間がかかる」、「破産費用が多額になる」、「任意売却の成功率が低下する」、そして「希望が反映されにくい」といったことです。

できるだけ、先に任意売却をし、その後に自己破産の申し立てをするようにしてください。

管財事件で任意売却を進める場合のデメリット

解決に時間がかかる

同時廃止事件は財産が無い状態での手続きになるため、裁判所へ申立て後、半年程で全てが終了します。
しかし、管財事件となれば、財産調査など業務が煩雑なため、全てが終了するまで申立てから1年以上の期間を要します。

破産費用が多額になる

業務が煩雑な管財事件は弁護士や司法書士へ支払う報酬も高くなります。同時廃止事件では10~20万円の費用に対して、管財事件は50~80万円程になります。
又、裁判所へ予納する(初めに支払うお金)は最低20万円が必要になります。このお金が貯まるまで裁判所へ破産の申立てが出来ません。

任意売却の成功率が低下する

管財事件で不動産を任意売却する場合、破産財団組入金(売却価格の3~7%)という費用を出費しなければなりません。
その出費方法は任意売却の売却価格の中から出費されるのですが、これにより、債権者へ分配される金額が安くなってしまいます。
そのため、その分を不動産の売却価格に上乗せしなければならない事態となり、結果、売却価格が上がったことで、購入者が現れないという事態を招くことがあるのです。

裁判所の破産管財人へ売却権限が移行され、債務者の希望が反映されにくい

管財事件になると裁判所は破産管財人(弁護士)を設置します。破産管財人は破産者(債務者)の代わりとなり、自ら不動産を売却できる権限があります。
そのため、任意売却に非協力的な管財人でれば任意売却せず、競売で処分されてしまうことがあります。
また、任意売却を検討してくれても、杓子定規な検討だけで、より広く販売活動が行われることは少なく、結果、債務者の希望が反映されないまま、売却されてしまうことがよくあるのです。

自己破産手続きを弁護士や司法書士へ依頼する場合

自己破産を直接依頼できる任意売却専門会社が近くに無い場合は、自己破産手続きは弁護士事務所か司法書士事務所に依頼しなければなりません。
その場合、「不動産は任意売却して欲しい」ことを、はっきりと言うようにしてください。大抵の弁護士さんは応じてくれるはずです。
もし、任意売却に応じてくれなかれば、その弁護士さんに自己破産を依頼するのは辞めておいた方がいいでしょう。

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この回答の著者

烏丸リアルマネジメント株式会社
代表取締役
矢田 倫基

宅地建物取引士
任意売却コンサルタント
NPO法人 住宅ローン問題支援ネット 理事

これまでに1,200件を超える住宅ローン返済・滞納問題を解決してきた、任意売却のエキスパート。数多くの住宅ローン困窮者を救ってきた面談は「心のカウンセリング」と呼ばれ、関西圏のみならず全国から相談者が後を絶たない。

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