DV離婚、元夫が住宅ローンを滞納。顔を合わせることなく任意売却に成功、安心して生活できるように

この解決事例の要点

ご相談時期 いずみさんが当社へ来られた時期は、銀行から「全額繰上返還請求」「期限の利益喪失」と記された書面が自宅に届いたときでした。住宅ローンは6回の滞納を越したときでもありました。 経緯とご相談内容 いずみさんは元夫によるDVが原因で離婚をしました。その元夫の暴力は妻であるいずみさんだけでなく子供に...

ご相談者について

ご相談者山川いずみさん(仮名) / 当時 41歳 / 女性
お住まい京都府京都市山科区
物件一戸建て
ご職業美容師
ご家族構成小学5年生の子供と2人暮らし(シングルマザー)
残債務2,600万円(住宅ローン)
ローン債権者住宅金融支援機構(住宅債権管理回収機構)

ご相談時期

いずみさんが当社へ来られた時期は、銀行から「全額繰上返還請求」「期限の利益喪失」と記された書面が自宅に届いたときでした。住宅ローンは6回の滞納を越したときでもありました。

経緯とご相談内容

いずみさんは元夫によるDVが原因で離婚をしました。その元夫の暴力は妻であるいずみさんだけでなく子供にも及んだことで、いずみさんは逃げるようにして家を出ました。そのため、慰謝料や養育費などの何の取り決めもできませんでした。それでも、あの夫と離婚できただけでも良かったといずみさんは思っていました。
ところが、いずみさんが家を出て間もないころ、銀行から突然、電話がかかってきました。それは、住宅ローンの滞納を知らせるもので、現在も自宅に住んでいる元夫が返済を滞らせていたのです。実はいずみさんは住宅ローンの連帯債務者でもありました。そのため、滞納によって自身にも影響を及ぶのではないかと思い、厳しい経済状況の中、なんとか支払うようにしました。しかし、数か月で返済ができなくなってしまったのです。元夫も相変わらずで、一向に支払ってくれる様子はなく、銀行からも頻繁に電話がかかってくるようになりました。しかし、どうすることもできず、電話にもでることができなくなりました。そして、住宅ローンの滞納が6回を越したとき、「期限の利益を喪失をしました」、「全額繰上返還請求」と記載された書面が内容証明で届き、ついに競売になってしまうことを察しました。
「競売になってしまうとどうなるのだろうか・・・」、「自己破産しないといけないのだろうか・・・」、「子供達への影響は・・・」など、これまで感じたことのなかった疑問や不安を感じるようになってきました。

ご相談者の希望

連帯債務者であるいずみさんは、まず自分にどのような影響が及ぶのかが気になっていました。競売で住宅ローンの残債務を補えるだけの金額で落札されれば、いずみさんにはなんら影響を及ぼすことはありません。しかし、自宅の資産価値は住宅ローン残債務よりもはるかに低いオーバーローンの状況にありました。残った借金は連帯債務者であるいずみさんにも請求されることは間違いありません。そこで、自宅を任意売却することで、いずみさんへの負債額を最小限に抑えるようにしました。
しかしながら、任意売却をする場合、契約行為、そして不動産の引き渡し、金銭授受(決済)を行わなければなりません。これは、元夫と顔を合わすことを意味します。元夫には今住んでいる住所を当然知らせるわけにはいきません。また、恐怖から顔を合わせることもできないということでした。

  • 住宅ローンの債務を最小限に済ませたい
  • 元夫とは顔を合わせることなく任意売却をしたい
  • 競売を回避して欲しい

解決のための行動と結果

問題解決

任意売却を行うにあたって、元夫の売却同意を得なければなりません。いずみさんから直接連絡させることはできないため、当社から接触をはかることにしました。お会いすると、元夫は暴力を振るうようには全く見えず、体の線も細く、お話しをしても、こちらの言うことを素直に聞いている感じの方でした。DV夫と聞くと、非常に危険人物と思われがちですが、私がかかわってきたDV夫のほんとんどの方は、威圧的、暴力的な態度を私達には一切みせません。逆に、非常に大人しいが故に、家族や身内には本性を見せ、発散させていたのかもしれません。
いずれにしても、元夫の売却同意を得ることが必要であるため、事の事情を説明し、協力してくれないかと打診しました。すると、申し訳なさそうに、任意売却に協力する旨の返事が返ってきました。
早速、債権者に任意売却をする旨を報告。結果、任意売却の活動期間として6ケ月をもらい、競売の申立ては一旦保留ということになりました。そして、任意売却するにあたっての販売価格については2,500万円に決まりました。
そして、販売活動から1ケ月が経ったとき、ようやく購入希望者が現れました。契約、決済(金銭授受、引渡し)となるのですが、今回、いずみさんは、元夫に今の住所を知られたくない、また顔を合わすことはしたくないという要望がありました。
不動産取引では原則、売主、買主が全員集まり対面で契約、決済を行わなければなりません。しかし、今回はそういう訳にはいきません。債権者に事の事情を説明し、当社司法書士をいずみさんの代理人として契約及び決済が行えないか打診をしました。結果、無事、その承諾を得ることができ、任意売却を完了させることができました。
今回の任意売却によって、二人には約100万円の債務が残ったのですが、それぞれ毎月2万円を支払い、2年で完済する計画で、住宅金融支援機構とは和解することができました。

ご相談者の現在

お二人の現在ですが、いずみさんはこれまで住んでいた場所から遠く離れた県へ引越され、お子さんと二人で生活をしています。元夫とは完全に縁が切れたことで、もう恐怖を感じることはなくなったそうです。また、住宅ローンからも解放されたことで、精神的にもだいぶ落ち着いてきたようです。
一方、元夫ですが、職場近くのマンションへ引っ越されました。2万円の返済を続けてくれているか心配でしたが、今のところ滞納なく支払ってくれているようです。

最後に

不動産の契約を行う場合は、原則、本人が署名捺印をしなければなりませが、民法上、第三者を代理人として、契約行為を行うことも可能とされています。しかし、任意売却はいくら法律上、代理行為が認められていても、債権者が認めてくれなければ任意売却はできません。
任意売却は通常の不動産売却とは異なり、売却した後も借金が残ります。その借金が残る以上、金融機関も本人に債務を認めさせる必要があり、契約行為や決済時における金銭の授受、領収書の受け取りなどに、絶対に不備があってはならないのです。法律上、代理行為が認められているからといって、当然にして任意売却でも認められるというものではないことを知っておいてください。
ところで、離婚にはさまざまな原因がありますが、やはり最近多いのがDV被害です。DVと聞くと非常に危険に感じると同時に、本当に任意売却に協力してくれるのだろうかと思うものです。ですが、私の経験上、むしろ協力的な対応を示してくれることが多くありました。今回もそうでしたが、元夫は非常に対応がよく、住宅ローンが払えなくなった理由、そして離婚に至った経緯についても詳しく話されていました。しかしながら、その必要以上の対応や説明が、自身の正当化を訴えているようにも感じ、ある意味、その対応こそ、虚勢の表れではないかとも感じました。

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この解決事例の著者

烏丸リアルマネジメント株式会社
代表取締役
矢田 倫基

宅地建物取引士
任意売却コンサルタント
NPO法人 住宅ローン問題支援ネット 理事

これまでに1,200件を超える住宅ローン返済・滞納問題を解決してきた、任意売却のエキスパート。数多くの住宅ローン困窮者を救ってきた面談は「心のカウンセリング」と呼ばれ、関西圏のみならず全国から相談者が後を絶たない。

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