他界した夫が所有権を半分持ったままの自宅。「できない」と断られ続けた任意売却を当社が「相続財産管理人」の設置で成功させ、親族間売買による住み続けにも成功

この解決事例の要点

膨らんだ会社の負債を苦に経営者の夫が自殺。連帯保証人である妻が10年間、スーパーのパートで毎月2万円の返済を続けた末に債権者からは一括弁済請求。自宅の売却を検討するも、他界したご主人が所有権の半分を持つ状態で、どこからも「うちでは売却不可能。わからない」と断られ続けた末、辿り着いた当社。「相続財産管理人」を設置して「誰のものでもない不動産」を任意売却。親族間売買の成功で、夫との思い出が残る自宅への住み続けにも成功。

ご相談者について

ご相談者御池由美子さん(仮名) / 当時 55歳 / 女性
お住まい京都府宇治市
物件一戸建て
ご職業小売店でパート勤務
ご家族構成1人暮らし
残債務2,000万円
ローン債権者京都信用保証協会(事業用ローン)

ご相談の時期

債権者である京都信用保証協会から突然、一括弁済請求を求める通知が届いたところで当社へ相談にいらっしゃいました。

ご相談内容

御池さんはご主人と建設会社を経営されていました。業界全体が斜陽化する中、会社の負債が膨らみ、代表を務めていたご主人は借金を苦にして自ら命を絶ちました。10年前のことです。

当時、会社の借金は7,000万円。ご主人の死後、一時的に社長の座についた御池さんは、弁護士を入れて会社を清算。結果、そのうちの5,000万円は消滅しました。
しかし、御池さんは連帯債務者であったため、残った2,000万円は返済しなければなりませんでした。

そのため、御池さんはスーパーでパートとして働きながら、毎月2万円ずつ返済を続けました。
しかし、2,000万円の負債の利息は14%。債務は膨らむばかりでした。

10年間、その状態を認めてくれたものの、金融機関もそれでは埒があかないと考えたのでしょう。御池さんのもとへ一括弁済を求める通知が届いたのです。

当然、2,000万円を一括して支払えるようなは資力は、御池さんにはありません。財産と呼べるものは居住している住まいくらいなもので、自宅を売却するのが唯一の返済方法でした。

そこで、御池さんは複数の不動産会社に声をかけてみたのですが、どの会社からも「売却は不可能」と言われたのです。

と言うのも、御池さんの住まいの権利の半分を、他界したご主人が持ったままだったためです。権利の半分が宙に浮いた状態だったため、どの不動産会社も売却をどのように進めれば良いのかがわからない物件だったのです。

30年前に自宅を購入する際、御池さん夫婦は自宅の所有権を分け、それぞれ半分ずつを保有することにしました。夫が自殺した際、本来なら夫の持ち分を相続するつもりでしたが、そうすると多額の借金まで受け継ぐことになります。

御池さんは相続放棄を選択したため、自宅の半分は「誰のものでもない」状態となってしまったのです。

誰も権利を持っていない不動産をどうやって売却すればいいのか、ほとんどの不動産業者は知りませんし経験がありません。弁護士などの法律関係者なら方法は知っているかもしれませんが、御池さんの希望を考慮した形で任意売却に成功させる調整力は期待できないでしょう。

どこに相談しても「売却不可能」「わからない」と言われた御池さんが最後にたどり着いたのが、当社でした。

ご相談者の希望

  • 今の自宅に住み続けたい

解決のための行動と結果

相続放棄されて宙に浮いた不動産を法的に処理するためには、「相続財産管理人」を申し立てる必要があります。
宙に浮いた不動産の処理を申請する権限は、もともと財産を所有していた人の利害関係人、もしくは検察官などが保有しています。
彼らが家庭裁判所に申請し「相続財産管理人」を設置してもらうことにより、「誰のものでもない不動産」を売却できるようになるのです。

御池さんのケースでは当社の司法書士が「相続財産管理人」となるべく申請を行い、家庭裁判所から認定を受けることができました。
任意売却を進めるには一定の期間が必要なので、債権者である京都信用保証協会との交渉も欠かせません。
御池さんに2,000万円の負債を一括弁済させるため、自宅の差押え、競売を計画していた債権者には、手順を踏んで任意売却し、売却代金で返済する工程を私が説明しました。
その結果、任意売却期間として半年間の猶予をもらうことができました。

御池さんが一番希望していたのは夫との思い出が残る自宅に住み続けることでした。
自殺した夫に対しては複雑な気持ちがあるものの、二人で購入し、幸せな記憶もたくさん詰まっている家に住み続けたいという思いには切実なものがありました。
ただし、現状では収入が月額20万円に満たないため、高額の家賃を支払うことは困難です。
投資家に購入してもらい、賃貸借契約を結ぶという手段もありますが、その場合家賃の相場は6万円程度となります。
自宅を売却した後、残債務を返済しながら毎月6万円の家賃を支払うのは困難でした。

そこで私が打診したのは「親族に購入してくれる人がいないか」ということでした。
その結果、御池さんのお姉さんが購入者として手をあげてくれました。
お姉さんにも夫や子どもなど家族がおり、一存では決められることではありません。
高額の不動産を購入しても、お姉さん一家にメリットはないので、家族の意向によってはトラブルになるケースです。
幸い、お姉さん一家は御池さんを助けることに反対せず、買い取りはスムーズに決まりました。

売却価格は周辺相場を参考に650万円、債権者にとっては妥当な価格かどうかが気になるところでしたが、納得してもらうよう詳細な査定資料等を作成し、なんとかその価格で任意売却に協力してくれました。
御池さんは自宅の所有者がお姉さんに変わったものの、それまでと変わらず暮らせることになり、現在も以前とほぼかわらない暮らしを営んでいます。

残債務については銀行との話し合いで、これまでと同じく毎月2万円を支払うことで合意を得ることができました。
月額20万円に満たない収入でも支払っていける返済額です。
もし差押えを経て競売になっていたら、住む家を失った上に高額な債務が残ったはずです。
家賃などの住居費を支払いながら、高額の返済を続けるのは御池さんには不可能です。
経済的に破綻することになり、生活は非常に苦しいものになったと思われます。

現在、御池さんの暮らしが成り立っているのは、お姉さんに買ってもらい、家賃の支払いを免除してもらっているためです。
ほとんどの専門家がさじを投げる難しいケースでしたが、任意売却に成功したことで、長期的に継続できる生活再建を実現できたといます。

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この解決事例の著者

烏丸リアルマネジメント株式会社
代表取締役
矢田 倫基

宅地建物取引士
任意売却コンサルタント
NPO法人 住宅ローン問題支援ネット 理事

これまでに1,200件を超える住宅ローン返済・滞納問題を解決してきた、任意売却のエキスパート。数多くの住宅ローン困窮者を救ってきた面談は「心のカウンセリング」と呼ばれ、関西圏のみならず全国から相談者が後を絶たない。

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