亡き父から承継、多額の負債を抱えた会社。父と同じく任意売却せざるを得なくなった自宅へ離婚後も妻子が住み続けられるようにと、義理の両親の協力を得て身内間売買に成功

この解決事例の要点

亡き父から承継したのは、トラブルが原因で多額の負債を抱えた会社。資金繰りが厳しく、事業継続が困難に、そして、別居。住宅ローン返済中の自宅マンションは事業融資の担保でもあり、競売にかけられる恐れがあったため、この先も妻子が住み続けられるようにと任意売却を希望。義理の両親の協力を得られ、「身内間売買」による任意売却を成功されました。会社清算、離婚、債務整理という厳しい状況を乗り越え、新しい人生を踏み出されました。

ご相談者について

ご相談者今田 剛さん(仮名) / 当時 48歳 / 男性
お住まい京都府京都市伏見区
物件マンション
ご職業会社経営
ご家族構成妻(専業主婦)と子(中学生)
残債務約3,000万円(事業融資)
ローン債権者保証協会

ご相談の時期

先代から承継した会社の経営難で資金繰りが悪化し、事業継続は困難であると判断。妻子との関係も悪くなり、離婚と会社の清算を決断されて当事務所へ相談にいらっしゃいました。

ご相談内容

実は今田さんのお父さまも当事務所のご相談者。5年前にご自宅の任意売却をなさいました。現在、今田さんが代表をお務めの会社は、元はお父さまが経営なさっていた医療機器メーカーです。まだお父さまが経営なさっていた8年前、とある企業とのトラブルで多額の債務を負うことになり、今田さんはその債務の連帯保証人に。

その後、コロナ禍が訪れ、不幸なことにお父さまが新型コロナウィルスに感染、急逝。そして、お母さまもその後を追うようにお亡くなりに。今田さんはお父さまの会社を承継しましたが、先のトラブルの影響で業績はどんどん悪化、ついには事業継続が難しくなってしまったのです。

それが原因で、ご家族との関係も悪化。奥さまからは「離婚して欲しい」と言われており、別居状態が2年以上も続いていました。

今田さんが所有する自宅マンションには、保証協会の債務(3,000万円)に対する担保(根抵当権)がついていました。事業継続が難しくなった今、自宅はいずれ保証協会によって競売にかけられてしまいます。そうなれば、妻子は強制的に家から追い出されてしまうことに。

そこで、「妻子がそのまま住み続けられるように、任意売却して欲しい」と当事務所へいらっしゃったのです。さらには、奥さまとの離婚、ご自身の個人債務・会社の清算のご相談も。

ご相談者の希望

  • 妻子がそのまま住み続けられるようにしたい
  • 残った債務は債務整理をして、生活再建を図りたい
  • 妻との離婚における公正証書の作成や協議離婚を進めて欲しい

解決のための行動と結果

今田さんが所有する自宅マンション、住宅ローンの残債務は1,700万円ほど。そして、保証協会の債務は約3,000万円ありました。合わせて約4,700万円。自宅マンションの資産価値は3,000~3,200万円といったところでしたので、売却してまず住宅ローンを全額返済できても、保証協会の債務は残ってしまいます。

つまり、任意売却をするには保証協会との協議が必要になる、ということです。

今田さんのご要望は、「妻子がそのまま住み続けられるように任意売却して欲しい」というもの。それを実現できる方法として、「個人再生」や「任意売却型リースバック」を採ることが一般的ですが、なんと、奥さまのご両親が「身内間売買」に協力してくれると今田さんは仰るのです。

離婚の話が進んでいる中、義理のご両親が今田さんに対して良い感情など持っているハズがありません。むしろ、敵意をお持ちでしょう。加えて、3,000万円以上もの大金を現金で用意できなければなりません。高齢では住宅ローンなどの高額ローンは組めないことをご存知なのかどうか? 私(矢田)がそれを直接確認する必要がありました。

後日、義理のご両親にご足労いただき、そのご意思を確認しました。「退職金などをかき集めれば3,000万円は工面できる」、「今田さんのためではなく、娘と孫のために協力したい」とのこと。しかし、本当にそれで良いのでしょうか? 何と言っても老後を過ごすための大切な資金です。娘と孫の自宅を守りたいが故に、ご自身の生活ができなくなっては本末転倒、被害者が多くなってしまうだけです。再度、そのリスクについてご説明差し上げましたが、そのご意思は固く、ブレることはありませんでした。

しかしながら、「身内間売買」はそう簡単なことではありません。債権者によっては、どのような事情であれ、そもそも認めないところもあります。なぜなら、担保不動産が適正な価格で取引されているのか? お金の流れに不透明性がないか? など、債権者からしても大変慎重に扱わなければならないからです。そのため、多くの金融機関が身内間売買には消極的なのです。

一方で、義理のご両親としては3,000万円のお金を用意できるにしても、当然少しでも安く購入したいと考えるものです。とは言え、相場からかけ離れた安い金額では、保証協会は任意売却を認めません。なぜなら、少しでも高く売却してお金(債権)を回収したいと考えるのが債権者だからです。

そのような綱引きで協議を進めること約1ケ月、双方が納得できる価格を見出せました。その価格3,050万円。50万円足が出てしまいますが、用意できないお金ではありませんでした。義理のご両親も納得され、お話を前へ進めることになりました。そして、さらに1ケ月後、不動産決済を行い、無事に任意売却を成功させることができたのです。

ご相談者の現在

現在、今田さんはご知人が経営する会社で正社員として働いています。雇われる身として慣れない部分もあるそうですが、お金に追われる生活から解放されたことで、精神的にとても楽になったと仰っていました。

現在、当事務所で残債務の破産手続きと会社の清算手続きを進めているところです。すべての解決までにはまだ時間がかかりますが、いずれ必ず解決できることになります。

また、奥さまとの離婚に関しては、当社が間に入って協議離婚を進めました。お子さまの養育費や離婚に伴う金銭のやり取り、お子さまとの面会交流などを公正証書にし、離婚にまつわる手続きもすべて終えられました。

一方、任意売却、身内間売買で自宅マンションの購入に協力して下さった義理のご両親は、それまでお住まいだったご自宅を売り払い、娘さん、お孫さんの4人でマンションに住むことになさったようです。

さて、離婚は多くの場合で女性にとって不利に働きます。養育費など公正証書で取り決めしても、相手方に資力がなくなれば、もらうことができなくなるからです。また、元夫の居所がわからなくなることもあるからです。ですので、女性にとって将来の不安は決して拭えるものではないのです。しかし、これもご自身が決断なさった人生の選択です。どうか幸せな人生を送っていただきたいと、心から願っております。

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この解決事例の著者

烏丸リアルマネジメント株式会社
代表取締役
矢田 倫基

宅地建物取引士
任意売却コンサルタント
NPO法人 住宅ローン問題支援ネット 理事

これまでに1,200件を超える住宅ローン返済・滞納問題を解決してきた、任意売却のエキスパート。数多くの住宅ローン困窮者を救ってきた面談は「心のカウンセリング」と呼ばれ、関西圏のみならず全国から相談者が後を絶たない。

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