認知症の父名義の自宅が競売に。「名義が(意志判断能力がない)父のままでは、不動産売却できない...」落札日の前日に成年後見人設置が間に合い、任意売却リースバックに成功

この解決事例の要点

自宅を担保に700万円の資金を借りて、念願だった飲食店を開業。しかし、当初から経営はうまく行かず、キャッシングなどで借金をして凌ぐ状況へ。結果、借金は膨らみ自宅が競売に。ところが、自宅の名義は認知症を患うお父さまだったため、「名義が(意志判断能力がない)父のままでは、不動産売却できない...」とお悩みになり当社へご相談。当社が緊急で成年後見人設置、落札日の前日に何とか間に合い、無事に任意売却リースバックを実現できました。

ご相談者について

ご相談者岩本重行さん(仮名) / 当時 40歳 / 男性
お住まい大阪府吹田市
物件一戸建て
ご職業飲食店経営
ご家族構成4人暮らし(妻と子の4人暮らし)
残債務700万円
ローン債権者大阪信用保証協会

ご相談の時期

裁判所から「担保不動産競売開始決定」の手紙を受け取られ、スグに当社へ相談にいらっしゃいました。

ご相談内容

岩本さんが自宅を担保に700万円を借りたのは2012年のこと。元々、飲食店で働いていた岩本さんは、そのお金を開業資金として念願だった自分のお店を開いたのです。

ところが、経営は当初からうまく行きませんでした。想定していたような収益をあげることはできず、開業資金の返済が厳しいときにはキャッシングやクレジットカードを使うことで何とか凌ぐことを繰り返したそうです。当然ながら、返って借金は膨らみ、状況はどんどん悪化して行きました。

そして、とうとう返済ができなくなり、借入先の金融機関から担保に入れた自宅を競売にかけられてしまったという経緯です。先ごろ、裁判所から送付された「担保不動産競売開始決定」を受け取り、慌てて当社へ相談にいらっしゃったのです。

岩本さんは「どうにかして競売を避ける方法はないものか...」と仰いました。そこまで思い悩む背景...実は、岩本さんのお母さんの自宅も担保に入れておられたのです。「お母さんの家まで競売で取られてしまうのではないか?」と心配なさっていたのです。岩本さんは、自分の家は仕方ないにしても、母親の家まで競売で取られてしまうことだけは、どうしても避けたかったのです。

そして、さらに大きな問題がありました。担保に入れている自宅の名義人が、認知症で施設に入っているお父さんのままだったのです。認知症を患っている方のように「意志判断能力がない人」が所有する不動産を売却するには、通常の不動産売却の手続きとは別の手続きが必要であることを、岩本さんは既にご存知でした。「この競売という状況でどうしたら良いのか?...」まったく検討もつかず、その相談先として当社をお選びになったのです。

ご相談者の希望

  • 母親の自宅を競売からまもりたい
  • 今の自宅に住み続けたい

解決のための行動と結果

認知症などで意志判断能力に欠ける方が名義人になっている不動産を売却するには、家庭裁判所で成年後見人を設置する手続きを行わねばなりません。しかし、この手続きには時間がかかります。既に競売が申し立てられている状況で、家庭裁判所による成年後見人の設置、そして、任意売却までを果たして滞りなく終わらせることができるのか? という大変難しい状況でした。

しかし、可能性がある限り、やるしかありません。大急ぎで成年後見人設置のための準備に取り掛かりました。もちろん、任意売却活動についても同時並行で進めて行かねばなりません。なぜなら、成年後見人が設置されてから任意売却活動を行なっていては間に合わないと考えられたからです。

今回、岩本さんは「できることなら、そのまま今の自宅に住み続けたい」とご希望でしたので、リースバックの検討を行いました。結果、580万円で購入したいという投資家が現れました。保証金なし、家賃5万円という条件です。債権者はこの価格で任意売却を認めてくれることになりました。あとは、成年後見人の手続きを待つのみです。


結果、競売の落札日の1ケ月前に成年後見人が正式に設置され、なんと落札日のわずか1日前というギリギリで無事決済を行い、競売を取り下げることに成功しました。

現在、「賃貸」という形ではありますが、岩本さんは住み慣れたご自宅へそのまま住み続けてらっしゃいます。任意売却後に残った借金は約300万円。これについては毎月3万円ずつ返済することで話し合いがまとまり、心配していたお母さんの自宅はひとまず競売にかけられることはなくなりました。

最後に

今回は、成年後見人の設置を要する任意売却であり、特に競売の申立てが既になされていて、極めて時間が限られている中での任意売却の販売活動でした。正直なところ、私もやってみなければわからない状況で、岩本さんの費用(家庭裁判所への用納金)倒れになってしまう可能性もありました。しかし、最終的にすべてがうまく行き、無事に競売を取り下げることができました。

しかしながら、任意売却ですべての借金が返済されたわけではありません。岩本さんは、300万円程の借金をこれから返済し続けなければなりません。もし、この返済が滞ってしまえば、今度こそお母さんの自宅は競売にかかってしまうでしょう。そうならないよう、何としても奥さまと協力して店の経営を頑張っていただきたいです。

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この解決事例の著者

烏丸リアルマネジメント株式会社
代表取締役
矢田 倫基

宅地建物取引士
任意売却コンサルタント
NPO法人 住宅ローン問題支援ネット 理事

これまでに1,200件を超える住宅ローン返済・滞納問題を解決してきた、任意売却のエキスパート。数多くの住宅ローン困窮者を救ってきた面談は「心のカウンセリング」と呼ばれ、関西圏のみならず全国から相談者が後を絶たない。

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